最近はマーケティングの勉強でコミュニティについて学んでいます。
お客様とより親密な関係が作れるブランド用のコミュニティは一体どのような効果があるのか、成功例を含めてこの記事をまとめてみました。
まず、コミュニティの大切さについて、SalesforceのState of the Connected Customerレポートによると、
84%の顧客が、数字ではなく人のように扱われることが非常に重要であると回答しています。
つまり、優れた製品だけでなく、人間的なつながりを感じる部分もビジネスの魅力の一つであることがわかります。
コミュニティとは?
コミュニティ・マーケティングを定義する前に、コミュニティという言葉を見ていきましょう。
Weblioの日本語辞書(オンライン)によると、
【「コミュニティは」目的や趣向を同じくする人々の集団。ソフトウェアの開発コミュニティや、ユーザーのコミュニティがある】と書かれています。
つまり、
近年流行っているオンラインサロンやコワーキングスペース(オフライン)はまさに、コミュニティの良い例です。
実は人間の歴史上では、コミュニティというのはそれほど新しいコンセプトではないですが、企業が作るブランド・コミュニティは比較的新しいものです。
ブランド・コミュニティは、特定のブランドを支持する仲間が集まるところで、感情的に共鳴しているところでもあります。
例えば、スポーツブランドのPumaが好きであれば、大型モールに行くとPumaの店を最初にチェックするでしょう。そこで、同じブランドの服を着ている人をみかければ、親近感が湧いてきますよね。
また、コアファンなら、Pumaの新商品を必ずチェックするし、イベントに招かれば参加してみようとも思うのです。
コアファンになってくれるコミュニティメンバーは一回や二回、商品を購入した人ではなく、積極的にブランドに関わるお客様。
このようなコミュニティを作るには、コミュニティ・マーケティングが大事になってきます。
コミュニティマーケティングとは?
コミュニティ・マーケティングとは、ブランドと特定のコミュニティを結びつけ、プラットフォームを通してメンバー間の交流を促します。
そこで、価値観を交換し、ひとつのコミュニティとして新しい価値を作っていきます。
私が住んでいたバンクーバーは、たくさんのコミュニティが存在しています。
オンラインとオフライン両方のプラットフォームを持っており、イベントをたくさん開催しています。
複数のブランドが協力し合って開催するイベントもあったため、知らないブランドからの招待状を見かけることがしばしばありました。
コロナになってからオフラインはオンラインへとシフトしていったと思いますが、こうしたコミュニティづくりの考え方は変わっていないと考えられます。
既存のグループと協力するか、独自のグループを作るか、最初は少人数でもスタートできます。
そこで魅力的な主催者と有意義なイベントができれば、お客様と深いつながりを作ることができるのです。
そうとは言え、コミュニティ構築は長期的なプロセスですし、試行錯誤のところが多いのです。
世の中の動きにも敏感なので、常に形を変えていくことが主催者側に求められ、チャレンジ的な仕事です!
コミュニティマーケティングのメリットとデメリット
メリット
- ユニークなカスタマー・エクスペリエンス(付加価値)
素晴らしい顧客体験を提供するブランドは、長期的な収益が期待できます。
コミュニティの大きなメリットは顧客からのフィードバックや苦情処理がすぐできることです。それによって商品の機能を高めたり、コミュニティのイベントを通して信頼関係を構築したりすることが可能です。
ただパソコンを売っているところと、パソコンを使いこなすための技を教えている場所とは、顧客体験は全く違いますよね。
- ロイヤリティの向上
ロイヤルティの高いお客様は何度も商品を購入するのです。
実は、コミュニティで繋がっていれば、新商品のお知らせが簡単になるのでロイヤリティの向上に繋がります。
しかし、ロイヤリティ向上を目指してコミュニティを作るのが決して簡単なことではありません。
そのようなコミュニティは「買ってほしい」という意識から「あなたの役に立つから使ってほしい」という意識のシフトが必要だと思います。
私がアルバイトでPumaのシューズを売ったことがあります。
目標の売上を意識すると、どうしても力が入って潜在顧客が離れていきます。
しかし、「本当に必要な人にお役に立つシューズを紹介したい」という意識にシフトしてからお客様との会話も長くなったし、心理的な負担も減ってきました。
そのような状態で売り上げを伸ばす戦略は話をしてくれるお客様を特定し、増やすことです。
私は特にアプローチを意識していました。

時々リピーターのお客様が来て「この前親切にしてくれてありがとう」を言ってくれて、わざわざ電話で感謝されることもあったのです。
でも、これがあくまでも店舗でのセールスです。
オンラインプラットフォームになると、一回一回の接触が商品への興味に繋がりますね。
- 口コミ効果
雰囲気が良くて美味しいレストランで食事した後、友人にそのレストランを伝えますか?
これが口コミ効果です。
ブランド・コミュニティと商品の関係はまさに「雰囲気が良くて美味しいレストラン」です。どんなに美味しくても暖かいスタッフがいなければ「もう一回行きたい!」と積極的に思わないでしょう。

でも、暖かくて面白いスタッフがいて、美味しい料理があれば、友達を連れていきたいと考えませんか?
- 人間性を表現する
コミュニティは商品ではないですが、商品の一部のようなモノだと思います。
そして、コミュニティがあることで「商品」には顔がつきます。
これが人間的なところですね。
実はサービスロボットが普及したら、「人間によるサービス」と「器械によるサービス」でものすごく価値観が分けられてくるし、使い分けも激しくなるはずです。
ロボットが比較的に自動化しやすい環境では、どこにも見かける存在になるでしょう。
統一感の中からユニーク性を出すためには、人間的なところを表現するのが大切だと思います。
マーケティング戦略に喩えると、それは「仕組み」の中に人間的な要素を入れること。
コミュニティは「人間性を求めている」ユーザーに特にアピールできるポイントです。
デメリット
- 感情的且つ理性的な主催者(人材の育成と確保)
大学にいた時は、学生によるカウンセリングを実施するグループに所属したことがあります。
危険な状態の生徒も受け付けていたため、私たちは専門知識を学ぶほか、サポートし合えるグループメンバー同士の関係づくりも大切でした。
一年間過ごしてきた中、「このグループはホームだ!」と口にするメンバーが増えます。(笑)
もちろん、そのグループはビジネスのコミュニティではないですが、一緒に笑ったり泣いたりするほど、強いコミュニティはないと体験させてくれたのです。
仕組みを守ると同時に、相手が安心する範囲での感情的なサポートができれば、かけがえのない付加価値を作ることになるのではありませんか?
感情的かつ理性的なグループリーダーが、コミュニティの柱になります。
- 長期的なアプローチ
YouTubeチャンネルの運営で気づいたことがあります。
体験や知識をシェアしている動画コンテンツは視聴時間が長く、サービスの告知になると離脱率は50%以上になることが多い。
誰だって「売られる」ことが嫌いですし、急に告知されても困りますよね。
なので、コミュニティ運営は長期的なアプローチであり、「セールスする場所」だという認識を持っていないほうが良いでしょう。
長期的なブランド構築と顧客体験を重視すると、CTAも効果的になるはずです。
- 高いコミットメント
コミュニティマーケティングでは、コミュニティインフラの構築やサポートに時間を費やし、メンバーの声に耳を傾け、常にコミュニケーションをとる必要があります。
スピード、パーソナル化、信頼関係構築は、コミュニティ・マーケティングにおける大きなメリットなので、チームで守るものですね。
これからは有名なコミュニティの例を5つ見ていきましょう。
コミュニティマーケティングの事例
1. Lego ideas

Legoのコミュニティ・プラットフォームでは、メンバーが新製品のためのアイデアを共有し、レゴで作った作品を紹介することができます。
そして、特定のアイデアに投票したり、コメントしたりすることができます。
このコミュニティを2014年から育てております。
Lego会社はプラットフォームを提供し、メンバーにより自発的な投稿がメインです。
その中からブランド製品として発売するものもいくつか選択するなど、参加するインセンティブを与えています。
2. Frugi Family

Frugiはサステイナブルな子供服ブランドです。
このブランドは専用のFacebookグループを通じて、家族の瞬間を共有しています。そこには熱心なお客様が集まり、会話をしたり、お気に入りの瞬間を共有したりしています。
そのほかには、アドボカシー・プログラムも2020年にはじまりました。
このプログラムは、「Frugi Fun」ブランドの支持者が会社の情報を広めて報酬をもらう仕組みです。
例えば、友人への紹介、アフィリエイトコードの共有、ソーシャルメディアへの投稿、コンテンツの作成、さらにレビューや体験談を残すことなど様々な取り組みが可能。
Frugiのコミュニティ・マーケティングは、複数のプラットフォームで戦略を組み合わせることで、情熱的なお客様とつながることができることを示してくれています。
3. Lululemon

Lululemonは、独自のコミュニティ構築戦略により、ファッション小売業として大きな成功を収めています。
Lululemonの戦略は、デジタルプラットフォームに依存していなく、リアルの地域密着型のコミュニティに焦点を当てています。
ヨガインストラクターやフィットネススタジオのオーナーなど、地域のリーダーとの関係を積極的に育てているし、Lululemonオフィスをオフィスをイベント会場として貸出もしています。

4. Addidas Creators Club

Adidasクリエイターズクラブは、リワードプログラムを通じてコミュニティを構築するプログラムです。
コミュニティメンバーは、画像のアップロードやトレーニングへの参加などの活動を完了すると、セールへの早期アクセス、製品の割引、イベントへの限定招待などのリワードを受け取ることができます。
5. NIKE and NFT

これが私が特に最近注目しているブランドストーリーです。
NIKEが「CryptoKicks」というNFTとしてのデジタルスニーカーを発売していて、その中で最も高いものが13万ドルで販売されました。
実はこの仮想のNFTスニーカーは平均5000ドルから9000ドルの間で購入されているのです!
リアルで履くことができないNFTスニーカーはどうしてこんなに高い値段で取引されているでしょう?
不思議に思いますよね。
それは、NIKEがNFTを発売する前から、世界中のスニーカーファンをターゲットにコミュニティを開拓し、育ててきたかという要因が大きいと考えられます。
NIKEは、2017年までに1億人以上のロイヤル顧客を持つ世界最大のスニーカーブランドの1つです。
そして、ロイヤル顧客は、通常の購入者より3倍以上の金額を費やしたと言われています。
NIKEは長年にわたり、コミュニティを強化するために様々な努力を重ねてきました。
まず、ファンを集めるためにNIKEメンバー専用のアプリがあります。
そして、グローバルのミートアップやコンテストも開催して、ファンにスニーカーのデザインをさせるという特別な体験もあるのです。
こうした努力は近年ホットなWEB3.0、NFTの時代にすぐに結果として実りましたね。
コミュニティマーケティングの具体的な戦術
ここでは、DUELがまとめたコミュニティ構築の戦術をお伝えします。
支援者(アドボカシー)、またはアンバサダー(大使)プログラムの作成
アドボカシーとアンバサダーは、コミュニティの中心的役割を果たし、会話を促進し、イベントを準備し、新しく参加する人を歓迎します。
このようなプログラムは、顧客に報酬を与え、ブランドの支持を積極的に奨励するシステムです。
多くの場合、報酬プログラム、VIPクラブ、あるいは有償のアンバサダー・ポジションを作ることも可能。
オンライン・プラットフォーム
Lego Ideas(サイト)やFacebookグループのようなオンライン・プラットフォームは、オンラインコミュニティを作るためのツールです。
ここではお客様と企業の間の透明性が求められてきます。
人々がつながり共有する場ではなく、一対多の広告チャネルになりつつあると感じさせたら、離れてしまう可能性が大きい。
社会的活動を支援する
これは海外ではよく見かける戦術です。
社会的な活動を支援することで、ブランドの性格がわかり、親近感が湧いてきます。
イベントの開催
様々なイベントが可能ですが、オンラインでもっとも実行しやすいのは学ぶ系のイベントやチームメンバー(企業側)の紹介です。
もしメンバー同士の交流を促したければ、オンラインでのお話会も可能です。
プレゼント
プレゼントを活用した成功例の中には、Lululemonがあります。
地域のアンバサダーは、ヨガマットなどをもらい、フィットネススタジオやインストラクターのクライアントに渡すことができるのです。
プレゼントは、顧客にとって具体的な価値を生み出し、信頼感を高めることができます。
ここで大事なのはプレゼントの本質です。
プレゼントはサンプルではなく、将来の購入を期待して送るようなものでもありません。
プレゼントはブランドとコミュニティの両方に関連したものでなければならず、コミュニティのメンバーにとって最高の価値であることが必要です。
コミュニティマーケティングのKPI

コミュニティを作って売上げに貢献するというのは抽象的なコンセプトです。
ここで、コミュニティ作りの専門家が推薦している具体的なKPIを紹介していきます。
まず、コミュニティづくりの「目的」をはっきりしなければいけません。
これはコミュニティづくりのフォーカスとなるものです。
- このコミュニティはセールスファンネルの構築が大事なの?
- 顧客エンゲージメントが大事なの?
- 商品販売のために作る?
最優先事項を決めてから、それに対する具体的なKPIを測定します。
コミュニティの活動に直接つながる目標やKPIの例としては、以下のようなものがあります。
顧客エンゲージメントの向上
- KPI例① = コミュニティユーザーの商品利用率が10%、またはアップセールの10%を示している
- KPI例② =コミュニティに参加している平均の顧客推奨度 > コミュニティに参加していない顧客の推奨度)
セールスファネルの生成
- KPI例= コミュニティによって生成されたリードの10%、またはその利益
ユーザーによるコンテンツ作り
- KPI例= ユーザーが作成したコンテンツが前年比25%増加した
ブランドの認知と宣伝
- KPI例①= ソーシャルでの言及数(#の数)
- KPI例②=コミュニティから顧客を紹介された数
商品の購入率
- KPI = コミュニティメンバーにおける購入率が非メンバーに比べて20%増加した
基本的には、コミュニティメンバーの平均パフォーマンスと非メンバーのパフォーマンスを比較することがコミュニティの成功を測定することです。
コミュニティの成果を図る方法はそれほどはっきりしていないところは今のところ、多いのです。トラッキング可能なインフルエンサーマーケティングも日々難しくなってきているのも事実。
しかし、コミュニティを構築することで多くの企業が急成長を体験したのも紛れのない事実です。
特に、今時の顧客は人間的なところを大切にするため、コミュニティを持つことが大事な資産だとみなされています。
コミュニティはブランドの評判を高め、ビジネスが長期的に成長するための土台となるでしょう。
まとめ
この記事は「コミュニティマーケティングの分析|海外の資料をまとめてみた」をテーマに書きました。
どうしてコミュニティマーケティングの興味が湧いてきたかというと、それはNFTの実績に関係があります。
全く無名な個人・組織でもNFTで成功を収めるケースはかなりあったため、いったいどんな価値があるのかを調べたところ、コミュニティマーケティングにたどり着きました。
今まではSEO、SNSのハック、広告などがマーケティングの認識でしたが、コミュニティマーケティングという新しいコンセプトの力をはっきり認識させたのはNFTの事例を勉強した時です。
実は、YouTubeを配信し、記事をシェアしていく中でよく思ったのはプッシュしない姿勢でどうしたら人と接すべきなのかです。
売られるのは嫌いですし、それを人にするというのも抵抗があるのが正直な気持ちです。
でも、今まで学んだのはパワー・セールスが多かったため、どうしてもこの固定概念を完全に消すことはできませんでした。
なので、今回の記事は自分のためにまとめたものでもあるし、私と同じ思いを持っているマーケターさんの参考になれたらうれしいです。